俺の髪の毛は、生まれた時から赤かった。
小さい頃はそりゃあ疎ましく思った時もあったけど、今じゃ自慢の髪の毛だ。
だけど、やっぱりずっと赤だとなんか飽きてきちゃって、俺は考えた。
もう高校生になるんだし、ちょっとくらいいいよな。
・・・よし、髪を染めよう!




























「はよーっ」
「おはよーブン太・・・って、何だよその頭!?お前、自慢の赤い髪は!?」
「あ?あー。なんか飽きたからさ。それよりどーよ、このオレンジ。」
「え、いや、カッコイイと思うけど・・・」
「だろぃっ!」




俺は満足しながらスキップで校舎に入った。
今日は高校の入学式。っつってもほとんどの奴が中学からエスカレーターだから、顔見知り。
だから、俺に注がれる視線は逆に気持ちいいくらいだ。
そのまま廊下を飛び跳ねていき、自分のクラスを確認して教室に入ろうとした。





ガラッ




「きゃ・・・」
「うぉっ、ごめん。大丈夫か?」



入ろうとした瞬間、出てこようとした小さい女子とぶつかりそうになった。
その女子は顔を上げて、俺の顔を見る。
コイツは・・・見たことある。確か、中3の時A組だった・・・




「・・・丸井くん?」
「あ?」
「・・・・・・・・その色、似合わないよ」




はそう言うなり、スッと俺の後ろを通り過ぎていった。
正直いま言われた言葉がめっちゃショックで、俺は固まってしまった。




「あー、ブン太、今の気にしなくていいよっ!」




教室の中からもう一人、女子が出てきた。
コイツは中1年の時にクラスが一緒だった、




ってさ、結構感性ズレてんのよ。なのに思ったこと全部口に言っちゃうタイプで。だから気にしないで?あたしはその色、前のよりいいと思うし!」




フォローのつもりで出てきたのかはわからないが、はそのままを追いかけた。
いくら感性がズレてるって聞かされても、やっぱり似合わないと言われたのはショックだ。
それからわかりやすいくらいに俺のテンションはガタ落ちして、もう入学式なんてやってられなかった。
入学式の途中で、担任に腹が痛いと嘘を言って抜け出させてもらった。
そして、校舎の裏の大きな桜の木の下に座り、何をするでもなくただボーッとしていた。








「あ。」

「・・・あ」






すると向こうから小さな女子がやってきて、俺を見るなり口を開けた。
・・・今いちばん会いたくない女子ナンバー1。




「・・・か。」
「うん。なんで丸井くん、そこにいるの?」
「え?あー・・・めんどくせぇから」
「入学式が?」
「ああ」
「へぇ、そうなの。じゃあね」
「あっ・・・」
「・・・なぁに?」





俺の手は思わず、去ろうとするの腕を掴んでいた。
なんで掴んだのか俺もわからず、とりあえず「座れば?」と呟いた。
は少し考えたあと、何も言わずに少し距離を置いて俺の隣に座った。



「・・・つか、こそ何してんだよ。」
「あたしは、この桜が見たかったの。だから見に来た。」
「・・・はぁ?」
「体育館から見えるこの桜がどうしても気になってね、抜けだしてきたの。」
「じゃあ結局サボったのか。俺と一緒じゃん」
「サボってないっ!抜けだしたの」
「一緒だっつーの」



俺がそう笑うと、はむーっと頬を膨らませた。






「・・・ね、なんで髪さ、染めちゃったの?」






いきなり真剣な顔をして、は言った。
俺は視線を外して、答えた。



「んー、まぁ気分転換みたいなモンかなっ」
「・・・あたし、前の赤い色の方が好きだった」
「・・・なんでだ?俺、けっこうこの色気に入ってんだけど・・・」
「丸井くんは気に入ってるかもだけどさ、あたしは気に入らないの。」
「だからなんでだよ!」
「だって、知らないの?丸井くんの前の髪の色、この桜の色とよく似合うんだよ」





は柔らかく微笑んでそう言った。




ザァッと強い風が吹いて、俺のオレンジ色の髪の毛をなびかせた。
その時、桜がたくさん降ってきて、の笑顔とその桜がよく似合った。
なのに、俺の人工的なオレンジ色は、その温かいものとは不釣り合いだった。


















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