「あーでも俺、先輩のこと好きっすわ。じゃ。」
「・・・・・・・・・・は?」




彼の人生初の告白は何とも淡泊なもので、実際に告白された私も理解するまでに随分時間がかかった。
たまたま部活帰りが一緒で、家もまぁまぁ近い距離にあったから一緒に帰ってきただけだとゆうのに。
道を歩きながらお喋りをして、そして突然告白をして、彼はピアスを光らせながら自宅へ帰って行った。
突然のことに私はその場所から3分くらい一歩も動けず、気がついた時にはクラスメイトで仲の良い謙也に電話していた。




「え、ちょっと謙也・・・私な、さっき告白されてん。」
<あぁー?何寝ぼけたこと抜かしてんねん。アホでもお前なんかに告ったりせんわー>
ブツッ


即座に電源ボタンを押して電話を切り、着信履歴の中から『白石蔵ノ介』の名前を探して通話ボタンを押した。
白石はすぐ電話に出て、「いきなりなんやねん?」と文句を垂れている。



「白石?なんか私、告白されたんやけど」



しばらくの沈黙の後、白石が答える。



<・・・・ホンマに?>
「ホンマ。」
<・・・、笑えないでぇ>
「白石までそんなことゆーんか。ホンマや。大マジ。」
<それは・・・その、財前くんか。>
「そーや。白石が『の家って財前ちの近くにあるからどうせなら送ってってやりー』とかぬかしてその言葉通り送ってくれた財前くんや!」




そうそう。事の発端は白石なんだ。
私は部活が終わって(ちなみに私は女子テニス部。)、たまたま男子の方も同じ時間に終わってたから、白石と謙也に話しかけに行ったわけで。
たまたまその2人と話していた財前くんも加わり、4人で話してたわけで。(ちなみに彼と私はこの時初めて出会った。)
いつものようにふざけ合って、私が「こんなに暗くなってもうてー、私可愛いから襲われるわー。誰か送ってやー」なんて冗談を言っていたわけ。
そしたら白石があのふざけた台詞を言いやがって、あたしが突っ込もうとしたら「ええッスよ」と何故か真面目に即答。
まぁ私が言いだしてしまったことだから後には引けず、ほとんど他人だった私と財前くんは一緒に帰り、なぜか告白されてしまった。
うん、今思えば財前くんと私、今日が初対面なんだけど!?



<まぁアイツは、部長の俺でもわからへん奴やからなー>
「しっかりしぃ部長!!!」
<そないなこと言われたってなー。ま、ええんちゃう?嫌われるよりは>




あっはっはと白石が声を出して笑っている。いや、私はどうしても笑えない。
まだ、財前くんの言った言葉が軽いものならいいんだ。「先輩面白いから好きっすわー」みたいな。
あれでしょ、それだったら人間的な好きじゃん!?でもさっき私に向けられた言葉は、全然そうではなくて。




−−−−−−−−−−−−−−−−



「財前くんって、彼女おらへんのー?」
「おらへん。」
「じゃ、好きな子は?」
「おらへん。」
「でもモテるやろ?」
「さぁ」
「告白とかも何回もされとんのやろー?」
「まぁ。でも俺から言ったことはあらへんッスわ」
「へぇー。付き合ったことある?」
「あらへん」
「ほぉー、そうなんや。人は見かけによらんなー」
「何やねんそれ」
「まぁまぁ。なんで好きな子つくらへんの?おった方が楽しくない?」
「いらへんねん。面倒臭いだけやし」
「ストイックやねぇ」
「あーでも俺、先輩のこと好きっすわ。じゃ。」
「・・・・・・・・・・は?」



−−−−−−−−−−−−−−−−




・・・突然すぎて意味がわからなかったけど、やっぱりこの言葉に込められている意味は『人間的に好き』というより『異性として好き』として見てしまう。
え、どうしよう人生初の告白がこんな簡単なものなんて!



「白石・・・私はどないしたらええんやろか」
<ほなとりあえず、財前くんのメアドでも教えちゃる>
「なぜメアド」
<このご時世、仲良くなるにはメールって大事やろ?ほら、早よ電話切って。メール送るから>
「・・・じゃあ切るで」




告白されてからメアドを知る、なんて絶対おかしい。
私は少々腑に落ちないところを感じながらも、電話を切った。
するとすぐメール受信中の文字が現れて、『四天宝寺中』と振り分けされたフォルダにメールが入る。
『白石蔵ノ介』の文字を押せば、メール内容のところに英数字が整然と並んでいた。
その文字を電話帳に登録し、『財前くん』と登録した。・・・そうだ、私は彼の下の名前を知らない。
早速メールを作り、題名に『ですが』と入れた。
そして内容には『送ってくれておおきに。それと、さっきのって、どうゆう意味なん?』と打って送った。
10分後くらいに返信が返ってきたと思えば、内容はたった6文字。

『好きって意味』




この15年間恋愛なんて皆無だった私にとって、最初の2文字はぐっとくる。
加えて、さっき財前くんが言った言葉と、彼の整った顔、様々な色の光を放つピアスが忘れられない。
なんかもう、頭ん中が財前くんで埋め尽くされてる!離れない!
ああ、もう!何なんだコイツは!












(なんか気になっちゃうじゃん!もう!!)






×back